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第63話 魔法学園祭二日目

Author: 黒蓬
last update Huling Na-update: 2025-04-23 06:00:11

街の広場を色々見て回っていると時刻も夕方に差し掛かる頃になっていた。

幾つかの取引もできて出店を満喫したところで今日は帰ることにした。

カサネさんも魔道具や本などをいくつか購入していたようだ。

ミルドさんの家に戻るとエフェリスさんが今日も美味しい食事を用意してくれていた。どうやらお店も去年より盛況だったらしく一日でほぼ売り切れたため、明日は家族で学園祭を楽しむことにしたらしい。

次の日、ミルドさん達と一緒に魔法学園まで向かいミルドさん達は先に出店を回るということでそこで分かれることになった。

俺達は予定通り、魔法練習場に向かうことにした。

塔まで歩いて行くと20人程の列ができている。塔を使えるのは一度に10人程度らしい。

「細長い塔ですね。これでどうやって上まで行くんでしょう?」

「なんらかの魔法なんだろうけど、俺にはさっぱりだな」

「そういえば人数制限があるみたいですけど、ロシェさんはこのまま乗れるでしょうか?」

・・・た、確かに。考えてなかった。どうしよう。

『考えてなかったって顔ね。気にしなくていいわ。私は先に上っておくから』

そういうと、ロシェの気配が俺から離れて山の上の方へと離れていくのが分かった。自力で登っていったらしい。流石だ。

「もう山の上まで行ったみたいだ。早いなぁ」

「かなりの急勾配ですのに。流石ロシェさんですね」

話しているうちに俺達の順番が回ってきた。

塔の中に入ると、何もない丸い空間で床には魔法陣のようなものが描かれていた。

塔の管理をしている人が「起動しますので動かないでください」と声を掛けて、壁際に合ったパネルのようなものに触れると、一瞬視界がぶれて次の瞬間には先ほど入ってきた入り口が無くなっていた。

「え?」

「到着しました。出口は反対側です」

言われて反対側を見ると確かに入り口と同じ扉が開いていた。

俺達以外にも数人が驚いた様子を見せながら出口から出て行く。恐らく初見かそれ以外かの違いなのだろう。

「何が起きたのか全く分かりませんでした。流石は魔

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  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第64話 驚異の全属性魔導士

    個人戦は一人でのパフォーマンスになるため、やはり複数属性を扱える学生が多かった。チーム戦ほどの派手さはなかったが、一人で複数の属性を操ってパフォーマンスを行う技量の高さはなかなか見ごたえがあった。 そうこうしているうちに例の彼女クレアの順番が回ってきた。「さぁ、最後は学園きっての天才魔導士の登場だーー!!」司会の男性がテンション高めにクレアの登場を告げる。(彼女そんなにすごい魔導士なのか・・・)呼ばれたクレアは何故か申し訳なさげにしながら登場して一礼してからパフォーマンスを開始した。 それを見た俺は彼女が天才と呼ばれたことに納得しつつも、さらに驚かされることになった。彼女は火・水・風・土・光・闇の6属性全てを使いこなしていたのだ。 火で円形のリングを作り、その周りに光と闇で影の観客席を作り、生み出した水から水のゴーレムを、地面からは土のゴーレムを作り出して、風が音声機の声を俺達の耳に届けた。 出来上がったのは影の観客たちが歓声を送る中、水と土のゴーレムがリングの中央で力比べをする舞台劇だった。「これを・・・一人で・・・?」 『確かに、これはレベルが違うわね。何故か本人は自信なさげにしているけど』カサネさんは同じ魔導士として驚嘆していた。それはそうだろう、彼女の4属性持ちでも希少だというのに、全属性を持つだけでなくこれだけ巧みに操っているのだから。 気になるのはロシェの言う通り本人の様子だった。ものすごいパフォーマンスをしているというのに当の本人は自信なさげというか申し訳なさそうにしているのだ。(もしかすると、この大会への出場は本人の意思ではなかったのかもしれないな)他の人達は殆どが舞台劇の方に目を奪われていて彼女の方は気にしていないようだ。劇は最終的に力で押された水のゴーレムが火のリングに足を踏み入れたところで足が蒸発してしまい、バランスを崩して場外負けという形で終わりを告げた。クレアが再び一礼して舞台袖に消えると、盛大な拍手が送られた。 個人戦の勝者は決まったようなものだろう。他の子達のパフォーマンスも良かったが正直レベルが違い過ぎた。

    Huling Na-update : 2025-04-24
  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第65話 魔法学園の学園長

    「初めましてじゃな。私はこの学園の学園長をしておるシディルじゃ。孫が世話になったようじゃの」今日は割り込みの多い日だなと思いつつ、俺達も三度目の自己紹介をする。「それで俺達に聞きたいことというのは?」 「うむ。お主達もここでは都合が悪かろうと思ってうちに誘ったのじゃ。聞きたいことというのはその子のことじゃよ」そう言ってシディルは何もない空間を指さした。いや、正確にはロシェが居る辺りを指さしている。 この人もロシェに気づいている?と思ったところでロシェの気配が右の方に移動したのが分かった。すると、シディルさんの指もそれを追うように動いていく。 やはり気づいている。ロシェも確認のために動いてくれたのだろう。 そうなると、話というのは何だろう?学園内にロシェを入れたのがまずいということはないと思う。他にも従魔を連れた客は居たのだ。姿を消していたことの注意とかなのだろうか。まぁ強制的に連行しようとしていないので敵意があるわけではないだろう。ここは素直に従ったほうが良いか。「分かりました。ご迷惑でなければお邪魔させて下さい」 「うむ。誤解なきように言うておくが、お主らを咎めたりするつもりはないのじゃ。単にわしの興味本心から招待しただけじゃから、そんなに警戒せんでくれ」・・・それならそうと最初に言って欲しかった。いや、まだ完全に信じて良いのかは判断できないけども。「ねぇ。その子って何のことなの?」 「わ、私も気になります!」と、そこでクレアとスフィリムの二人が何の話か分からないと質問してきた。 周りを見回してみると大会が終わったことで人もまばらになっている。 これならそんなに騒ぎになることもないか?「実は姿隠で隠れている従魔が居るんだ。今見せるから騒がないでくれよ。ロシェ姿を見せてくれるか」 『なんだか自信が無くなってくるわね。今まで例の獣以外には見つかったことなかったのに』そうぼやきつつロシェが姿を現した。俺やカサネさんが壁になってなるべく他の人に見えない様にはしたが、気づいたらしい一部の人が動揺した声を上げていた。「この子

    Huling Na-update : 2025-04-25
  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第66話 ハイドキャットの生態調査依頼1

    魔法学園の学園長というだけありシディルさんの屋敷はかなり大きかった。「さて、話というのは先ほども言った通りそのハイドキャットのことなのじゃが・・・失礼な問いになるかもしれんが率直に聞こう。アキツグ君、その子をわしに譲る気はないかね?もちろん相応の対価を支払うつもりじゃ。わしなら大抵のものは用意できるぞ?」いきなりか。確かにハイドキャットが希少だというのは聞いているから、その可能性は考えていた。変に回りくどいことをされるよりは対応しやすい。 俺はちらっとロシェの方に視線を送る。すると『まさか応じるつもりじゃないでしょうね?』という怒気の篭った視線が返ってきた。いや、念のためにロシェの意思を確認しようと思っただけなんだが、意図を汲み取っては貰えなかったようだ。「申し訳ありませんが、ロシェは大切な仲間なので」 「そうか、残念じゃな。では代わりと言ってはなんじゃが、うちの孫と交換というのはどう<バシッ!>いたた、じょ、冗談じゃよクレア」 「笑えません!」シディルさんの発言に割と食い気味でクレアさんが突っ込みを入れていた。 確かに酷いことを言っていたが、クレアさんの突っ込みも割と容赦ないな。これは恐らくだが今回だけでなく普段からこういうやり取りをしていそうな気がする。「やれやれ、冗談はさておいてじゃな、そのハイドキャットの子を調べさせて欲しいのじゃよ。もちろん危害を加えるようなことはせんと約束しよう。わしの研究室で映像記録や魔力波を通しての生体情報の採取などをさせて欲しいのじゃ」 「なぜわざわざ俺達に?シディルさんなら俺達に頼らずともそれこそ他から連れて来て貰うこともできるのでは?」 「ふむ。お主はその子の価値を見誤っておるようじゃの。現在、わしの知る限りで世界にハイドキャットを人が使役している例は2人だけじゃ。もちろんその2人にも交渉は試みたのじゃが、断られてしまったのじゃ」世界中でたった二人!?確かに珍しいとは聞いていたが、そんなレベルとは完全に予想外だった。あの時クロヴさんは怪我したロシェを割と平然とした顔で連れて来ていたし、従魔登録を担当したギルド職員さんも驚いてはいたが平然を装って仕事はしていたので、普通に

    Huling Na-update : 2025-04-26
  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第67話 ハイドキャットの生態調査依頼2

    そこまでする必要はなかったかもしれないが、何となく屋敷の中だとシディルさんに聞かれてしまうのではないかと思ったのだ。 それにしても調査依頼か、ロンディさんの時を思い出すなぁ。理由が魔道具の発展のためだったり、こちらが弱みを握られてるっていうところも同じだし。違いは対象が俺じゃなくてロシェってところだけど。「さて、どうしようか。シディルさんも話した感じ友好的だし、断ってもロシェのことを言いふらしたりするような人ではなさそうだけど。調べられた結果ロシェ達に不利益な情報が広まる可能性もあるよな?」 『無いとは言い切れないでしょうね。私達を見つけるようなものが作れたりするのかもしれないし』 「そうだよなぁ。姿を消せる原理を知ろうとしているわけだし、それを応用すればそういうこともできそうだよな」 「そうですね。当然リスクはあると思います。ただ分からないところはこちらで悩んでも仕方ないですし、聞いてみれば良いのではないですか?」 「・・・そうだな。もう少し色々聞いてみてそれでも危険だと思ったら悪いけど断わろうか」結論が出たところで屋敷に戻り、シディルさんに先ほど話していたリスクについて聞いてみることにした。「ふむ。ハイドキャットという種の優位性へのリスクのぅ。ハイドキャットの仲間がいるお主達からすれば当然の懸念じゃな。では、調査結果やその後の研究の成果は世間には公表しないということでどうじゃ?わしが個人的に研究する資料とするだけであれば、ハイドキャットたちに危険が及ぶこともなかろう」 「えっ?それでいいんですか?魔道具の発展のための研究なのでは?」 「もちろんできるのであればそうしたいところじゃが、それではお主達は納得せんじゃろう?それに一番の目的はわしの探求心を満たすためじゃからの。わしは今でこそ学園長なぞやっておるが、もともとは魔道具の研究者での。若い頃に解明できなかった姿隠の原理が未だに心残りで、今でも趣味で細々と研究を続けておったのじゃ。じゃからそれでお主達が納得してくれるのなら安いものよ」シディルさんは昔を懐かしむように自分の過去の話をしてくれた。 隣で聞いていたクレアさんは驚いたような納得したような表情をしている。

    Huling Na-update : 2025-04-27
  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第68話 新装備!魔道具の試し撃ち

    シディルさんの依頼を受けたことで、数日はマグザの街に留まることになった。 宿に関してはシディルさんの屋敷を使わせて貰えることになったため、エフェリスさん達に礼を告げて場所を移していた。 エフェリスさんは「気にしなくて良いのに」などと言ってくれていたが、流石に理由もなくお世話になり続けるのも悪いし、なるべくロシェの近くに居たほうが良いだろうという判断でもある。ちなみにミルドさんとエリネアさんは片付けが終わったらまたロンデールに戻るらしい。 とはいえ、四六時中側についていても仕方ないし何より俺もカサネさんも特殊なスキル持ちだ。シディルさんの研究室がどんなものかは分からないが、俺達が中に入ることでそれに感付かれるとまた話がややこしくなる気がしたので、ロシェとは別行動をとることになった。 ・・・カサネさんは調査に興味があるみたいで少々残念そうにしていたが。 そして俺達は今、街外れにある森に来ていた。 冒険者ギルドに森の魔物の討伐依頼が出ていたので、とある魔道具のお試しも兼ねて受けてきたのだ。このあたりには強い魔物は出ないのだが、最近森の魔物が増えてきているらしく、定期的に冒険者に依頼を出しているらしい。 とある魔道具というのはロシェの調査依頼の報酬として受け取ったシディルさん特製の魔道具である。俺達からすると何もしていないのに報酬だけ受け取っている感じなので申し訳なさはあるのだが、当のロシェ自身に『気にせず行ってきなさい』と言われてしまっていた。 森の奥に進んでいくと確かに怪しい気配が増えてきた。魔物同士が争っているような音も時折聞こえてくる。「この辺で良さそうですね。あまり奥に行って囲まれたりしても困りますし」 「そうだな。俺はここでもちょっと怖いくらいだけど」 「ふふっ、すぐに慣れますよ。アキツグさんの魔法の腕も上がってきてますから」 「そう願いたいな。戦わずに済むならそのほうが良いんだけど」そう話しつつも、俺は早速魔道具を近づいてきた魔物に向けて狙いを定めた。気を落ち着けて慎重に引き金を引くと、魔道具から雷の弾丸が撃ち出された。 弾丸は撃ち出された勢いのままに魔物の胴体を貫通し、その魔物は

    Huling Na-update : 2025-04-28
  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第69話 突然の遭遇戦

    「いっっ!い、今のは?」 「あれは・・・シャドウウルス!?ここには危険な魔物は居ないはずじゃ?」振り向いた先に居たのは真っ黒な熊の様な魔物だった。左右の手には鋭い刃のような鉤爪が付いている。先ほどはあれで攻撃されたのだろう。ハクシンさんから貰っていた斬撃耐性がなかったらもっと深手を負っていたかもしれない。「アキツグさん、大丈夫ですか?」 「あぁ、傷はそこまでじゃなさそうだ。戦うのに支障はない」 「分かりました。私があいつの気を引きますからアキツグさんはサポートをお願いします。シャドウウルスは陰に潜む能力がありますから、気を付けて下さい」 「気を引くって、そっちこそ大丈夫なのか?さっきまでだって結構な数を倒してたのに」 「私これでもBランク冒険者ですよ?これくらいの危険は慣れてますから」カサネさんは悪戯っぽい笑顔を浮かべてそう言うと、俺から離れてシャドウウルスに魔法を放ち始めた。シャドウウルスもカサネさんの方を脅威と判断したのだろう。俺からカサネさんの方に視線を移した。 森の中であるため火属性の魔法は使えない。カサネさんは氷や風の魔法をメインに攻撃しているが、シャドウウルスは体格に似合わない素早い動きで魔法を躱し、勢いのままにその鋭い鉤爪を振り下ろしてきた。 しかし、カサネさんもその動きは予想していたのか目の前に土の壁を生み出し、自身は横に飛びながらさらにシャドウウルスの側面に向けて氷の槍を撃ち出した。 シャドウウルスは片手を土の壁に埋めており素早い回避は不可能な状態だ。当たるかと思われた氷の槍は、しかしその背後の木に突き刺さった。 シャドウウルスが木の影に潜り氷の槍を躱したのである。本能的なものかもしれないが判断力も高いらしい。 その後、俺も隙を見て魔銃で援護をしようと試みてはいたのだが、まだ扱いに不慣れなのを差し引いてもシャドウウルスの素早さと影潜りの能力の高さにその悉くが躱されていた。 カサネさんもそんなシャドウウルスを相手に魔法を巧みに操って攻防を繰り広げているのだが、流石に身体能力の面ではシャドウウルスが有利な上に俺達は先ほどまでも別の魔物を倒していて疲労が残っている。少しずつだが押され始めていた

    Huling Na-update : 2025-04-29
  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第70話 戦うこと、守ること

    「お、終わった・・・よな?」 「えぇ、何とか倒せましたね」 「あ~終わったぁ。上手くいって良かった。死ぬかと思った」 「確かに。あそこまで強いとは思っていませんでした。以前に一度シャドウウルスと戦ったことがあったのですが、あれとは別物の強さでしたよ」 「カサネさん、本当にごめん。あんな奴の相手をほとんど一人で任せてしまって」 「いえいえ、謝らないでください。引き受けたのは私ですから。それに最終的にはアキツグさんの機転のおかげで倒せたんですから」 「いやでも、ずっと危険な役回りを任せっぱなしっていうのは・・・」 「これでもこの世界の冒険者としては先輩ですからね。まぁ今回は少し焦りましたけど、、それでも気になるようであれば強くなって今度は守って下さいね?」そういうとカサネさんは戦う前と同じように悪戯っぽい笑みを浮かべた。 強くなる・・・か。今まではあまり戦うことなんて考えてなかったけど、仲間を守りたいのであれば守れるだけの力は必要だよな。いや、俺の場合はまず自分の身を守れるようにするところからか。 幸いにもそのためのスキルも、道具も俺は手に入れることができている。あとは使いこなせるように努力して経験を積んでいかないとだな。「そうだな。いずれは俺が守れるように頑張ってみるよ」俺の言葉にカサネさんは一瞬きょとんとしたような表情を見せた後、「期待してますね」といってまた楽しそうな笑顔を浮かべた。 思わぬ乱入者が現れたが、魔道具のテストと魔物の討伐依頼は問題なく終わらせることができた。 後は冒険者ギルドに戻ってシャドウウルスの件も含めて報告すれば完了だな。 そう考えて倒したシャドウウルスの死骸をマジックバッグに仕舞おうとしたところであることに気づいた。「カサネさん、これ」 「傷跡・・・ですね。何かの獣に噛まれた跡のようですが、そんなに古いものではなさそうです」それはシャドウウルスの背中にかなり深い傷跡を残していた。「もしかするとその何かから逃げてきたのかもしれませんね。ということは・・・」 「こいつよりもさらに強い何かがこの近くにいるかもし

    Huling Na-update : 2025-04-30
  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第71話 シディル邸にて

    ギルドへの報告を終えて、シディルさんの屋敷へと戻ってくると1階には誰の姿もなかった。クレアさんはまだ学園なのだろう。シディルさんとロシェはまだ地下の研究室にいるようだ。「二人はまだ地下にいるみたいだ。疲れたしちょっと休憩にしようか」 「そうしましょう。私、お茶を入れてきますね」そう言ってカサネさんがキッチンの方に入っていったあと、入れ替わりで地下室からロシェが出てきた。『おかえりなさい。どうやら無事みたいね。なんだかあなたの気配が陰った気がして少し心配だったのよ。距離が離れていたせいではっきりとは分からなかったのだけれど。カサネはキッチンかしら?』俺が戻ってきたのに気づいて上がってきてくれたらしい。「あぁ、ただいま。ちょっと予想外の魔物に出くわしてしまってな。何とか倒せたけど大変だったよ。カサネさんはお茶を入れに行ってる」 「あ、ロシェさん。ただいま戻りました。ロシェさんの分もお茶入れますね」 『ありがとう。あなたは変わりなさそうね』 「あ、アキツグさんから聞いたんですか?そんなことないですよぉ。すごく大変だったんですから」改めて考えると魔法を使っていたとはいえ、カサネさんはあいつの猛攻をずっと一人で捌き続けていたのだ。流石Bランク、とんでもない実力者だよな。『あら、あなたがそんな愚痴を零すなんて本当に苦労したみたいね。アキツグ、あなたは戦いに慣れてないんだからあまり無茶はしないようにね』 「うぐっ。わ、分かってるよ。とはいえ守られるばかりっていうのもカッコ悪いからな。俺も少しは強くならないと」 『へぇ。珍しいわね、あなたがそんなこと言うの。でも、良いんじゃない?無理しない程度に頑張りなさい』 「あぁ。自分の力の無さは今日痛感したからな。無茶はしないさ」そんなことを話していると、地下室からシディルさんも戻ってきた。「おぉ、お主ら戻っておったのか。急にその子が上に戻りたがる様子を見せたから扉を開けてやったのじゃが、何かあったのかの?」 「えぇ。まぁ。魔道具のテストも兼ねて近くの森まで魔物討伐のクエストに行ってきたんですが、そこでシャドウウルス

    Huling Na-update : 2025-05-01

Pinakabagong kabanata

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第71話 シディル邸にて

    ギルドへの報告を終えて、シディルさんの屋敷へと戻ってくると1階には誰の姿もなかった。クレアさんはまだ学園なのだろう。シディルさんとロシェはまだ地下の研究室にいるようだ。「二人はまだ地下にいるみたいだ。疲れたしちょっと休憩にしようか」 「そうしましょう。私、お茶を入れてきますね」そう言ってカサネさんがキッチンの方に入っていったあと、入れ替わりで地下室からロシェが出てきた。『おかえりなさい。どうやら無事みたいね。なんだかあなたの気配が陰った気がして少し心配だったのよ。距離が離れていたせいではっきりとは分からなかったのだけれど。カサネはキッチンかしら?』俺が戻ってきたのに気づいて上がってきてくれたらしい。「あぁ、ただいま。ちょっと予想外の魔物に出くわしてしまってな。何とか倒せたけど大変だったよ。カサネさんはお茶を入れに行ってる」 「あ、ロシェさん。ただいま戻りました。ロシェさんの分もお茶入れますね」 『ありがとう。あなたは変わりなさそうね』 「あ、アキツグさんから聞いたんですか?そんなことないですよぉ。すごく大変だったんですから」改めて考えると魔法を使っていたとはいえ、カサネさんはあいつの猛攻をずっと一人で捌き続けていたのだ。流石Bランク、とんでもない実力者だよな。『あら、あなたがそんな愚痴を零すなんて本当に苦労したみたいね。アキツグ、あなたは戦いに慣れてないんだからあまり無茶はしないようにね』 「うぐっ。わ、分かってるよ。とはいえ守られるばかりっていうのもカッコ悪いからな。俺も少しは強くならないと」 『へぇ。珍しいわね、あなたがそんなこと言うの。でも、良いんじゃない?無理しない程度に頑張りなさい』 「あぁ。自分の力の無さは今日痛感したからな。無茶はしないさ」そんなことを話していると、地下室からシディルさんも戻ってきた。「おぉ、お主ら戻っておったのか。急にその子が上に戻りたがる様子を見せたから扉を開けてやったのじゃが、何かあったのかの?」 「えぇ。まぁ。魔道具のテストも兼ねて近くの森まで魔物討伐のクエストに行ってきたんですが、そこでシャドウウルス

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第70話 戦うこと、守ること

    「お、終わった・・・よな?」 「えぇ、何とか倒せましたね」 「あ~終わったぁ。上手くいって良かった。死ぬかと思った」 「確かに。あそこまで強いとは思っていませんでした。以前に一度シャドウウルスと戦ったことがあったのですが、あれとは別物の強さでしたよ」 「カサネさん、本当にごめん。あんな奴の相手をほとんど一人で任せてしまって」 「いえいえ、謝らないでください。引き受けたのは私ですから。それに最終的にはアキツグさんの機転のおかげで倒せたんですから」 「いやでも、ずっと危険な役回りを任せっぱなしっていうのは・・・」 「これでもこの世界の冒険者としては先輩ですからね。まぁ今回は少し焦りましたけど、、それでも気になるようであれば強くなって今度は守って下さいね?」そういうとカサネさんは戦う前と同じように悪戯っぽい笑みを浮かべた。 強くなる・・・か。今まではあまり戦うことなんて考えてなかったけど、仲間を守りたいのであれば守れるだけの力は必要だよな。いや、俺の場合はまず自分の身を守れるようにするところからか。 幸いにもそのためのスキルも、道具も俺は手に入れることができている。あとは使いこなせるように努力して経験を積んでいかないとだな。「そうだな。いずれは俺が守れるように頑張ってみるよ」俺の言葉にカサネさんは一瞬きょとんとしたような表情を見せた後、「期待してますね」といってまた楽しそうな笑顔を浮かべた。 思わぬ乱入者が現れたが、魔道具のテストと魔物の討伐依頼は問題なく終わらせることができた。 後は冒険者ギルドに戻ってシャドウウルスの件も含めて報告すれば完了だな。 そう考えて倒したシャドウウルスの死骸をマジックバッグに仕舞おうとしたところであることに気づいた。「カサネさん、これ」 「傷跡・・・ですね。何かの獣に噛まれた跡のようですが、そんなに古いものではなさそうです」それはシャドウウルスの背中にかなり深い傷跡を残していた。「もしかするとその何かから逃げてきたのかもしれませんね。ということは・・・」 「こいつよりもさらに強い何かがこの近くにいるかもし

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    「いっっ!い、今のは?」 「あれは・・・シャドウウルス!?ここには危険な魔物は居ないはずじゃ?」振り向いた先に居たのは真っ黒な熊の様な魔物だった。左右の手には鋭い刃のような鉤爪が付いている。先ほどはあれで攻撃されたのだろう。ハクシンさんから貰っていた斬撃耐性がなかったらもっと深手を負っていたかもしれない。「アキツグさん、大丈夫ですか?」 「あぁ、傷はそこまでじゃなさそうだ。戦うのに支障はない」 「分かりました。私があいつの気を引きますからアキツグさんはサポートをお願いします。シャドウウルスは陰に潜む能力がありますから、気を付けて下さい」 「気を引くって、そっちこそ大丈夫なのか?さっきまでだって結構な数を倒してたのに」 「私これでもBランク冒険者ですよ?これくらいの危険は慣れてますから」カサネさんは悪戯っぽい笑顔を浮かべてそう言うと、俺から離れてシャドウウルスに魔法を放ち始めた。シャドウウルスもカサネさんの方を脅威と判断したのだろう。俺からカサネさんの方に視線を移した。 森の中であるため火属性の魔法は使えない。カサネさんは氷や風の魔法をメインに攻撃しているが、シャドウウルスは体格に似合わない素早い動きで魔法を躱し、勢いのままにその鋭い鉤爪を振り下ろしてきた。 しかし、カサネさんもその動きは予想していたのか目の前に土の壁を生み出し、自身は横に飛びながらさらにシャドウウルスの側面に向けて氷の槍を撃ち出した。 シャドウウルスは片手を土の壁に埋めており素早い回避は不可能な状態だ。当たるかと思われた氷の槍は、しかしその背後の木に突き刺さった。 シャドウウルスが木の影に潜り氷の槍を躱したのである。本能的なものかもしれないが判断力も高いらしい。 その後、俺も隙を見て魔銃で援護をしようと試みてはいたのだが、まだ扱いに不慣れなのを差し引いてもシャドウウルスの素早さと影潜りの能力の高さにその悉くが躱されていた。 カサネさんもそんなシャドウウルスを相手に魔法を巧みに操って攻防を繰り広げているのだが、流石に身体能力の面ではシャドウウルスが有利な上に俺達は先ほどまでも別の魔物を倒していて疲労が残っている。少しずつだが押され始めていた

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第68話 新装備!魔道具の試し撃ち

    シディルさんの依頼を受けたことで、数日はマグザの街に留まることになった。 宿に関してはシディルさんの屋敷を使わせて貰えることになったため、エフェリスさん達に礼を告げて場所を移していた。 エフェリスさんは「気にしなくて良いのに」などと言ってくれていたが、流石に理由もなくお世話になり続けるのも悪いし、なるべくロシェの近くに居たほうが良いだろうという判断でもある。ちなみにミルドさんとエリネアさんは片付けが終わったらまたロンデールに戻るらしい。 とはいえ、四六時中側についていても仕方ないし何より俺もカサネさんも特殊なスキル持ちだ。シディルさんの研究室がどんなものかは分からないが、俺達が中に入ることでそれに感付かれるとまた話がややこしくなる気がしたので、ロシェとは別行動をとることになった。 ・・・カサネさんは調査に興味があるみたいで少々残念そうにしていたが。 そして俺達は今、街外れにある森に来ていた。 冒険者ギルドに森の魔物の討伐依頼が出ていたので、とある魔道具のお試しも兼ねて受けてきたのだ。このあたりには強い魔物は出ないのだが、最近森の魔物が増えてきているらしく、定期的に冒険者に依頼を出しているらしい。 とある魔道具というのはロシェの調査依頼の報酬として受け取ったシディルさん特製の魔道具である。俺達からすると何もしていないのに報酬だけ受け取っている感じなので申し訳なさはあるのだが、当のロシェ自身に『気にせず行ってきなさい』と言われてしまっていた。 森の奥に進んでいくと確かに怪しい気配が増えてきた。魔物同士が争っているような音も時折聞こえてくる。「この辺で良さそうですね。あまり奥に行って囲まれたりしても困りますし」 「そうだな。俺はここでもちょっと怖いくらいだけど」 「ふふっ、すぐに慣れますよ。アキツグさんの魔法の腕も上がってきてますから」 「そう願いたいな。戦わずに済むならそのほうが良いんだけど」そう話しつつも、俺は早速魔道具を近づいてきた魔物に向けて狙いを定めた。気を落ち着けて慎重に引き金を引くと、魔道具から雷の弾丸が撃ち出された。 弾丸は撃ち出された勢いのままに魔物の胴体を貫通し、その魔物は

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第67話 ハイドキャットの生態調査依頼2

    そこまでする必要はなかったかもしれないが、何となく屋敷の中だとシディルさんに聞かれてしまうのではないかと思ったのだ。 それにしても調査依頼か、ロンディさんの時を思い出すなぁ。理由が魔道具の発展のためだったり、こちらが弱みを握られてるっていうところも同じだし。違いは対象が俺じゃなくてロシェってところだけど。「さて、どうしようか。シディルさんも話した感じ友好的だし、断ってもロシェのことを言いふらしたりするような人ではなさそうだけど。調べられた結果ロシェ達に不利益な情報が広まる可能性もあるよな?」 『無いとは言い切れないでしょうね。私達を見つけるようなものが作れたりするのかもしれないし』 「そうだよなぁ。姿を消せる原理を知ろうとしているわけだし、それを応用すればそういうこともできそうだよな」 「そうですね。当然リスクはあると思います。ただ分からないところはこちらで悩んでも仕方ないですし、聞いてみれば良いのではないですか?」 「・・・そうだな。もう少し色々聞いてみてそれでも危険だと思ったら悪いけど断わろうか」結論が出たところで屋敷に戻り、シディルさんに先ほど話していたリスクについて聞いてみることにした。「ふむ。ハイドキャットという種の優位性へのリスクのぅ。ハイドキャットの仲間がいるお主達からすれば当然の懸念じゃな。では、調査結果やその後の研究の成果は世間には公表しないということでどうじゃ?わしが個人的に研究する資料とするだけであれば、ハイドキャットたちに危険が及ぶこともなかろう」 「えっ?それでいいんですか?魔道具の発展のための研究なのでは?」 「もちろんできるのであればそうしたいところじゃが、それではお主達は納得せんじゃろう?それに一番の目的はわしの探求心を満たすためじゃからの。わしは今でこそ学園長なぞやっておるが、もともとは魔道具の研究者での。若い頃に解明できなかった姿隠の原理が未だに心残りで、今でも趣味で細々と研究を続けておったのじゃ。じゃからそれでお主達が納得してくれるのなら安いものよ」シディルさんは昔を懐かしむように自分の過去の話をしてくれた。 隣で聞いていたクレアさんは驚いたような納得したような表情をしている。

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第66話 ハイドキャットの生態調査依頼1

    魔法学園の学園長というだけありシディルさんの屋敷はかなり大きかった。「さて、話というのは先ほども言った通りそのハイドキャットのことなのじゃが・・・失礼な問いになるかもしれんが率直に聞こう。アキツグ君、その子をわしに譲る気はないかね?もちろん相応の対価を支払うつもりじゃ。わしなら大抵のものは用意できるぞ?」いきなりか。確かにハイドキャットが希少だというのは聞いているから、その可能性は考えていた。変に回りくどいことをされるよりは対応しやすい。 俺はちらっとロシェの方に視線を送る。すると『まさか応じるつもりじゃないでしょうね?』という怒気の篭った視線が返ってきた。いや、念のためにロシェの意思を確認しようと思っただけなんだが、意図を汲み取っては貰えなかったようだ。「申し訳ありませんが、ロシェは大切な仲間なので」 「そうか、残念じゃな。では代わりと言ってはなんじゃが、うちの孫と交換というのはどう<バシッ!>いたた、じょ、冗談じゃよクレア」 「笑えません!」シディルさんの発言に割と食い気味でクレアさんが突っ込みを入れていた。 確かに酷いことを言っていたが、クレアさんの突っ込みも割と容赦ないな。これは恐らくだが今回だけでなく普段からこういうやり取りをしていそうな気がする。「やれやれ、冗談はさておいてじゃな、そのハイドキャットの子を調べさせて欲しいのじゃよ。もちろん危害を加えるようなことはせんと約束しよう。わしの研究室で映像記録や魔力波を通しての生体情報の採取などをさせて欲しいのじゃ」 「なぜわざわざ俺達に?シディルさんなら俺達に頼らずともそれこそ他から連れて来て貰うこともできるのでは?」 「ふむ。お主はその子の価値を見誤っておるようじゃの。現在、わしの知る限りで世界にハイドキャットを人が使役している例は2人だけじゃ。もちろんその2人にも交渉は試みたのじゃが、断られてしまったのじゃ」世界中でたった二人!?確かに珍しいとは聞いていたが、そんなレベルとは完全に予想外だった。あの時クロヴさんは怪我したロシェを割と平然とした顔で連れて来ていたし、従魔登録を担当したギルド職員さんも驚いてはいたが平然を装って仕事はしていたので、普通に

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第65話 魔法学園の学園長

    「初めましてじゃな。私はこの学園の学園長をしておるシディルじゃ。孫が世話になったようじゃの」今日は割り込みの多い日だなと思いつつ、俺達も三度目の自己紹介をする。「それで俺達に聞きたいことというのは?」 「うむ。お主達もここでは都合が悪かろうと思ってうちに誘ったのじゃ。聞きたいことというのはその子のことじゃよ」そう言ってシディルは何もない空間を指さした。いや、正確にはロシェが居る辺りを指さしている。 この人もロシェに気づいている?と思ったところでロシェの気配が右の方に移動したのが分かった。すると、シディルさんの指もそれを追うように動いていく。 やはり気づいている。ロシェも確認のために動いてくれたのだろう。 そうなると、話というのは何だろう?学園内にロシェを入れたのがまずいということはないと思う。他にも従魔を連れた客は居たのだ。姿を消していたことの注意とかなのだろうか。まぁ強制的に連行しようとしていないので敵意があるわけではないだろう。ここは素直に従ったほうが良いか。「分かりました。ご迷惑でなければお邪魔させて下さい」 「うむ。誤解なきように言うておくが、お主らを咎めたりするつもりはないのじゃ。単にわしの興味本心から招待しただけじゃから、そんなに警戒せんでくれ」・・・それならそうと最初に言って欲しかった。いや、まだ完全に信じて良いのかは判断できないけども。「ねぇ。その子って何のことなの?」 「わ、私も気になります!」と、そこでクレアとスフィリムの二人が何の話か分からないと質問してきた。 周りを見回してみると大会が終わったことで人もまばらになっている。 これならそんなに騒ぎになることもないか?「実は姿隠で隠れている従魔が居るんだ。今見せるから騒がないでくれよ。ロシェ姿を見せてくれるか」 『なんだか自信が無くなってくるわね。今まで例の獣以外には見つかったことなかったのに』そうぼやきつつロシェが姿を現した。俺やカサネさんが壁になってなるべく他の人に見えない様にはしたが、気づいたらしい一部の人が動揺した声を上げていた。「この子

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第64話 驚異の全属性魔導士

    個人戦は一人でのパフォーマンスになるため、やはり複数属性を扱える学生が多かった。チーム戦ほどの派手さはなかったが、一人で複数の属性を操ってパフォーマンスを行う技量の高さはなかなか見ごたえがあった。 そうこうしているうちに例の彼女クレアの順番が回ってきた。「さぁ、最後は学園きっての天才魔導士の登場だーー!!」司会の男性がテンション高めにクレアの登場を告げる。(彼女そんなにすごい魔導士なのか・・・)呼ばれたクレアは何故か申し訳なさげにしながら登場して一礼してからパフォーマンスを開始した。 それを見た俺は彼女が天才と呼ばれたことに納得しつつも、さらに驚かされることになった。彼女は火・水・風・土・光・闇の6属性全てを使いこなしていたのだ。 火で円形のリングを作り、その周りに光と闇で影の観客席を作り、生み出した水から水のゴーレムを、地面からは土のゴーレムを作り出して、風が音声機の声を俺達の耳に届けた。 出来上がったのは影の観客たちが歓声を送る中、水と土のゴーレムがリングの中央で力比べをする舞台劇だった。「これを・・・一人で・・・?」 『確かに、これはレベルが違うわね。何故か本人は自信なさげにしているけど』カサネさんは同じ魔導士として驚嘆していた。それはそうだろう、彼女の4属性持ちでも希少だというのに、全属性を持つだけでなくこれだけ巧みに操っているのだから。 気になるのはロシェの言う通り本人の様子だった。ものすごいパフォーマンスをしているというのに当の本人は自信なさげというか申し訳なさそうにしているのだ。(もしかすると、この大会への出場は本人の意思ではなかったのかもしれないな)他の人達は殆どが舞台劇の方に目を奪われていて彼女の方は気にしていないようだ。劇は最終的に力で押された水のゴーレムが火のリングに足を踏み入れたところで足が蒸発してしまい、バランスを崩して場外負けという形で終わりを告げた。クレアが再び一礼して舞台袖に消えると、盛大な拍手が送られた。 個人戦の勝者は決まったようなものだろう。他の子達のパフォーマンスも良かったが正直レベルが違い過ぎた。

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第63話 魔法学園祭二日目

    街の広場を色々見て回っていると時刻も夕方に差し掛かる頃になっていた。 幾つかの取引もできて出店を満喫したところで今日は帰ることにした。 カサネさんも魔道具や本などをいくつか購入していたようだ。ミルドさんの家に戻るとエフェリスさんが今日も美味しい食事を用意してくれていた。どうやらお店も去年より盛況だったらしく一日でほぼ売り切れたため、明日は家族で学園祭を楽しむことにしたらしい。次の日、ミルドさん達と一緒に魔法学園まで向かいミルドさん達は先に出店を回るということでそこで分かれることになった。 俺達は予定通り、魔法練習場に向かうことにした。 塔まで歩いて行くと20人程の列ができている。塔を使えるのは一度に10人程度らしい。「細長い塔ですね。これでどうやって上まで行くんでしょう?」 「なんらかの魔法なんだろうけど、俺にはさっぱりだな」 「そういえば人数制限があるみたいですけど、ロシェさんはこのまま乗れるでしょうか?」・・・た、確かに。考えてなかった。どうしよう。『考えてなかったって顔ね。気にしなくていいわ。私は先に上っておくから』そういうと、ロシェの気配が俺から離れて山の上の方へと離れていくのが分かった。自力で登っていったらしい。流石だ。「もう山の上まで行ったみたいだ。早いなぁ」 「かなりの急勾配ですのに。流石ロシェさんですね」話しているうちに俺達の順番が回ってきた。 塔の中に入ると、何もない丸い空間で床には魔法陣のようなものが描かれていた。 塔の管理をしている人が「起動しますので動かないでください」と声を掛けて、壁際に合ったパネルのようなものに触れると、一瞬視界がぶれて次の瞬間には先ほど入ってきた入り口が無くなっていた。「え?」 「到着しました。出口は反対側です」言われて反対側を見ると確かに入り口と同じ扉が開いていた。 俺達以外にも数人が驚いた様子を見せながら出口から出て行く。恐らく初見かそれ以外かの違いなのだろう。「何が起きたのか全く分かりませんでした。流石は魔

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